今月号の相談は「慢性腰痛で椎間板ヘルニアと診断され手術を勧められているがどうしたらいいか」というもの。さっそく、ソフィア整骨院の古川ぶんと先生に聞いてみた。
Q 慢性腰痛で椎間板ヘルニアと診断され手術を勧められています。つい最近もぎっくり腰になりましたが、運よく一週間ほどで痛みが引きました。この長年の腰痛から解放されるには手術しかないのでしょうか。
A 慢性腰痛の原因はおそらく筋肉のこわばりによるものだと思います。突然のぎっくり腰もヘルニアとは関係なく、筋肉のけいれん痛だったのでしょう。一週間ほどで寛解したことからも、筋肉のけいれんが治まり回復したと考えるのが自然です。よってヘルニアを手術する必要はありません。
Q 病院ではヘルニアを治すには手術しかないと言われているのですが。
A そもそも「椎間板ヘルニアが神経を圧迫して痛みを生じる」という説明自体、神経生理学的に根拠がなくナンセンスです。仮に椎間板ヘルニアが痛みの原因ならば、そのヘルニアが修復されないかぎり痛みが治まることはないはずです。にもかかわらず、ぎっくり腰の痛みが自然と引いたわけですから、ヘルニアとの因果はなく、筋肉のけいれんによる痛みだったと推測されます。
Q 同様の症状に悩まされている患者さんは多いのでしょうか。
A このような誤診は非常に多いです。中高年によく見られる腰やひざの痛みのほとんどは筋肉のこわばりによるものです。慢性痛は習慣化した筋肉のこわばりであり、急性痛は一過性のけいれん痛です。よって筋肉由来の痛みに対しては筋肉治療を施すことが最適解になります。
Q ヘルニアは気にしなくてもかまわないということでしょうか。
A そのとおりです。椎間板ヘルニアは長期にわたる筋肉の張力の不均衡の結果かもしれませんが、どちらにしてもそのまま放置してかまいません。同様に、経年による骨、軟骨、半月板などの変性に対しても検査や治療の必要性はありません。レントゲンやMRIで診断されるこれらの変性は、中高年の健常者にも普通に見られる所見ですから。
Q 病院でヘルニアと診断されたらどのように対処したらいいのでしょうか。
A ヘルニアは恐るるに足らず。前述したとおりヘルニアが痛みを生じるという生理学的根拠はありません。まずは「ヘルニアは大変な病気だ」という先入観を捨てましょう。そしてヘルニアであることを無視して筋肉の治療とケアをしっかり行うことです。痛みのない日常生活を取り戻すためには、患者さん自身が正しい痛みの生理学を理解することが大切です。