今月号の相談は「施術を受けるときに自分の痛みをうまく伝えられない」というもの。さっそく、ソフィア整骨院の古川ぶんと先生に聞いてみた。
Q 治療院で自分の症状を伝えるときにうまく相手に伝えられません。どのように表現すればいいのでしょうか。
A 最初に、痛みとは常に主観的で個人的な体験であることを理解してください。たとえば腰の痛みを「腰痛」とひとくくりにして表現しますが、それでは痛みの状態を正確に判断することはできません。そもそも、痛みとは「不快な感覚性、情動性の体験」と定義されており、「腰が痛い」という人を百人集めたとしても、そこには百通りの症状や痛みの感じ方があるのです。だからこそ、問診の際にはどこが痛いのかだけでなく、「どのように感じているのか」「どんなことをツラく感じているのか」「どのような気持ちなのか」「どんなことにストレスを感じているのか」、自身の感じている痛みを主観的な表現でいいので包み隠さずに伝えてください。治療家が知りたいのは「腰痛」ではなく、腰の痛みを訴えている目の前の「あなた」なのですから。
Q 痛みを客観的に測定することは難しいということなのでしょうか。
A 医学は日進月歩で発展しさまざまな分野で機械化されていますが、痛みはあくまでも個人の「体験」に根差すものであり、レントゲンやMRIなどの画像検査でその全容を説明することはできません。痛みとか不安とか抑うつとか、人が感じていることを他人が客観的事実として断定することはできないのです。われわれ治療する側もそのことを踏まえて患者さんに接しなくてはいけません。
Q 日常生活でのストレスも痛みに関連してくるのでしょうか。
A 痛みが情動的なものである以上、仕事や人間関係、介護などのライフストレス、またはマラソンレース前や試験前などのイベントストレスが痛みに関係することもあるでしょう。要は日常生活でのツラさが痛みになるし、悲しみが痛みにもなるし、怒りが痛みとしてカラダに投影されることもあるということです。
不安は痛みを強くし、安心感は痛みを和らげます。われわれ治療家に望まれるスタンスは、痛みの疾病観察ではなく「傾聴」と「共感」を主体にした人間観察であると思っています。