今月号の相談は「ランニングで太ももの裏を傷めたが、その後、なかなか治らず、お尻や膝まで痛くなってきた」 というもの。さっそく、ソフィア整骨院の古川ぶんと先生に聞いてみた。
Q ランニング中に太ももの裏を傷めてしまったのですが、その後、なかなか治らず、お尻や膝まで痛くなってきました。これはいったいどういった症状なのでしょうか。
A ささいなキッカケで生じた痛みであっても、それが治らずにいると、その痛みが広がったり、慢性痛に移行してしまったりするケースがあります。そもそも臨床の現場でよく見られる筋骨格系の痛みは、筋肉の硬縮による血行不良が原因であることがほとんどです。しかし、ときには痛みに対する不安やストレスといった心的な要素で交感神経が興奮し、筋肉の異常が解消されたにもかかわらず、痛みを感じるようになってしまうこともあるのです。長期にわたって痛みが改善されない場合、痛み系のメカニズム自体に問題が生じている可能性があるので要注意です。
Q そのような痛みをさらに放置すると、どのようになるのでしょうか。
A 運動器系の痛みは通常、動作にともなって生じるのですが、こうしたやっかいな痛みの場合、安静時にも痛みを生じるようになることがあります。たとえば、ただ家で寝転がってテレビを観ているだけなのに、なぜか足腰に痛みを感じてしまうようなケース。このような場合、痛みを感じる末梢神経のセンサーがつねに興奮し、痛みに対する感受性が強くなってしまっているわけです。こうなると、絶え間ない痛みによって交感神経が刺激され、その結果さらに筋肉がこわばり、ますます痛みを感じるようになっていきます。まさに痛みによる負の悪循環に陥るのです。
Q そうならないためにはどうしたらいいのでしょうか。
A いったんやっかいな痛みのサイクルが完成してしまうと、完治させるのにかなりの時間を要します。痛みの原因と思われる筋肉を治療しても、新たに違う部位に痛みが生じたり、筋肉がゆるんでも相変わらず脳で痛みを強く感じたりと、抜本的な治療にいたらないことが多いからです。当然、施術者としては粘り強く治療を続けていきますが、心因的な要素が強くなってくると筋肉に対する治療だけで除痛することは困難です。だからこそ、痛みがこじれる前に早期治療、早期除痛を図る必要があるのです。